名古屋入管に収容されていたスリランカ人女性が亡くなった事件について、入管が医療体制と情報共有に不備があったと最終報告を取りまとめる方針と、読売新聞の電子版ニュースを見ました。(2021年8月5日の報道)今日の記事は『佐藤正文の頭の中』です。
何ともやりきれないニュースです。私は外国人の収容案件もやりますので、色々な不幸が重なった結果と思っています。しかし、私自身、入管や外国人を取り巻く状況について実態を知っているので、このようなことが発生する原因も想像できます。
・入管の医療体制の不備
⇒医者が常駐できない、仮に常勤医であっても収容を優先する入管の姿勢
・収容施設の居室環境、衛生環境、食事
・収容者同士の言い争い、喧嘩
・入管の組織文化、組織体質
・役所同士で連携がない
外国人の収容を取り巻く周辺環境に、この事件が発生する遠因があると考えています。
私が収容案件をやる場合、「自分の国に帰るもの方法の一つだよ。入管に泊まるのが苦しくなったら、いつでも自分の国に帰れるからね。いつでも言ってください」と伝えます。皆さん最初は「ビザをもらうまで頑張ります!」と答えますが、1週間たち2週間たつと元気がなくなります。
定期的に本人に面会して、精神面を含め何か問題がないか確認します。また、入管対応におかしな点があれば、随時入管に苦情の申し立てもします。本人が「もう、国に帰りたい。」ということであれば、入管と話し合って帰国手続きに移行します。入管法違反だけなら、再度日本に来られる可能性がありますし、本国に帰れば自由の身です。
収容案件は、入管法で認められている権利を最大限に使うのではなく、長期的な視点でその人の人生を広く考える必要があります。日本ときっかけを作って、母国に戻って日本と貿易の仕事をしてもいいです。限られた状況で次の一手を考えましょう。
オーバーステイになって一旦帰国したけど、本国で貿易会社を経営している人、日本語学校の先生、ITエンジニア、実習生の送り出し機関に就職など母国で日本とつながりのある仕事をしている外国人を何人も知っています。何十年かぶりに日本に行きたいけど、昔のオーバーステイがあるから観光ビザの書類申請をしてほしい、自分はオーバーステイになったけど、子供を日本に留学させたいなどの相談や依頼は結構あります。
『佐藤正文の頭の中』では、佐藤正文の仕事への取組み、心構え、感想、日ごろ考えていることなど、つれづれなるままに、ひぐらしパソコンにむかい、心にうつりゆくよしなしごとを そこはかとなく書き綴ります。
第26号
2021年(令和3年)8月9日
執筆者 行政書士 佐藤正文