前回は、入管が偽装難民対策として2018年1月15日以降は難民認定の運用を厳しくしていることについて説明しました。現在は2018年1月14日以前の難民認定政策の失敗の揺り戻しで難民認定が厳しくなっていると言えるかもしれません。
さて、本日は別の角度から難民認定を考えてみます。
令和2年の難民認定数は47名、難民と認められずに人道上の配慮でビザ発給を受けた人は44名です。日本は難民条約締約国ですが、難民認定の条件を非常に狭く考えており、積極的に難民を受け入れ保護しようとする姿勢はありません。
難民認定は入管法に法律上の根拠があります。難民申請者が提出した書類をもとに審査をしますが、難民であることの説明責任を難民自身に課しています。難民認定の申請書の記入は難しくはありませんが、裏付け書類の準備がとてつもなく大変なのです。
日本が難民認定をしない(難民認定が少ない)そもそもの問題として、入管法の中で難民認定を規定していることです。「日本人を含む全ての人の出入国と外国人の在留の公正な管理と難民認定手続きの整備」が入管法の目的です。ここには、基本的人権、保護、庇護という理念や思想を基盤にして難民認定をする考えが欠如しています。
入管法は外国人管理の法律で、入国管理局は国家権力を背景に、外国人の出入国、在留管理を行う役所です。入管は適法適正な滞在をしていない外国人のビザを不許可にする権限、外国人の身柄を拘束し強制送還をする入国警備官がいますから、入管は「外国人の取り締まり機関、外国人の警察」なのです。
ですから、通常の外国人のビザ審査と同様に難民審査でも一点の曇りもない申請内容を難民にも求めています。難民は迫害などから逃れて日本に来た人ですから、外国人の出入国や在留管理という考え方をベースに難民審査をすること自体に問題があります。
『佐藤正文の頭の中』では、佐藤正文の仕事への取組み、心構え、感想、日ごろ考えていることなど、つれづれなるままに、ひぐらしパソコンにむかい、心にうつりゆくよしなしごとを そこはかとなく書き綴ります。
第55号
2021年(令和3年)9月16日
執筆者 行政書士 佐藤正文