秋葉原にある、興行ビザ、
芸術ビザ専門の行政書士事務所

佐藤正文の頭の中(第4回)

2007年にさとう行政書士事務所のホームページ開設時に書いた挨拶文を再掲します。佐藤正文がどんな人なのか、なぜ行政書士になったのか、外国人のビザ業務を選んだ理由など書いています。時間がある時に、ご一読ください。

佐藤正文より皆様へご挨拶

はじめまして 行政書士の佐藤正文と申します。

時々、「なぜ、佐藤さんは外国人を専門にしているのですか。」と聞かれますが、冗談半分に「美人の外国人と知り合いになりたいからです!!」と答えるときもあります。気苦労が多い、この業務を専門にしている理由が自分自身でも分からなくなることがあります。

私は、高校卒業後、新設学部で受験者が少なかったおかけで、なんとか大学に入れました。大学時代は、下宿をしたのですが、やはり3度の食事が一番面倒で、お金がかかります。そこで「食事つき」の求人広告に惹かれ、学生食堂でアルバイトをして食費を浮かました。

奨学金の節約とアルバイトで貯めた120万円位を元手に大学3年の2月から6月上旬までフランス語の勉強とユーレイルパスでヨーロッパを放浪し、日本に戻り、就職活動の時期が過ぎていたこともあって、モラトリアムで大学院に進みました。

就職後、フランスでの経験が忘れられなくて再び1年くらい渡仏、2回目ですから、物事に対して冷静でした。そのとき感じたのが、外国にいることの精神的な不安定さです。言葉の問題もさることながら、「命・金・ビザ」の問題が頭から離れません。

フランスではこちらがマイノリティーですから、フランス人が数人集まっているだけで「アジア人だから」何かされるのではないか?とはらはら、どきどきします。やましいことはありませんが、警察官をみるとドキッとします。留学生ですから、当然、働けません。お金は減っていきます。ビザを延長するにも、保証人や滞在費の問題が絡んできました。

フランスの会社に就職すれば、会社がビザ専門の弁護士に頼んで労働ビザを取ってくれる、フランス人と結婚すればビザが取れる、何十年もいればビザがもらえる、パリは取締りが厳しいが地方は大丈夫、日本人は捕まってもすぐ釈放してくれる・・・いろいろな噂が日本人の間で伝わります。真実を確かめようにも、だれに聞けばよいか分からないし、お金がかかるので外国人専門の弁護士に聞くわけにもいきません。ビザが取れなくて、3ヶ月ごとにヨーロッパで出国、入国のスタンプを押してくれる国を往復している日本人もいました。ビザは外国人にとって関心事です。

今にして思えば、あの時、外国人専門の弁護士にフランス滞在のビザについて相談していれば、自分の人生が変わったかもしれないと後悔しています。

現在、日本で生活している外国の人達も、きっとあの時の自分と同じように噂に惑わされ、精神的に不安定な状況ではないでしょうか。誰かに相談したい、今の状況が何とかならないかと不安な気持ちで一杯かもしれません。

外国で暮らすことはその人にとっても、周りの人にとっても一大事です。人生の転機です。僕もそうでした。両親をはじめ兄弟、親戚、友達は色々心配してくれ、また、協力や多くの励ましをもらいました。その願いに応えようと一生懸命になった記憶があります。冒頭に書きましたが、外国人を専門にしている理由は、自らの体験にあるのかもしれません。

ビザは日本で生活する外国人にとって非常に大切です。やり方を間違ったために、夢破れ帰国するケースを幾つも見てきました。将来の自分の人生を真剣に考えるように、ビザについても真剣に考えませんか。

さとう行政書士事務所は、シンプルな申請から、複雑で難易度の高い申請まで年間80~90件位を受任しています。無料相談まで入れれば、年間300件~400件位でしょうか。ビザは個々の外国人に交付されます。人間が対象ですから、対応も千差万別です。ここにビザの難しさがあります。

当事務所はホームページ経由、前回のクライアントからの再度の依頼、人からの紹介が主です。提携先を多数抱え、単純更新や再入国など簡単な申請を数多く手がけている、大手事務所とは違います。一件ずつ手作りです。

相談を受けて、一番悲しく残念なことは、打つ手がない時です。なんら悪意はなく、単にうっかりしていた、あるいは、ビザの仕組みを良く知らないために誤ったやり方をして、日本滞在が出来なくなった外国人の何と多いことか。もう少し早く相談に来てくれれば良かったのに、と悔やまれることもあります。ビザは病気と一緒なので早め早めに相談してほしいものです。

ビザは、日本国が与えるものではありませんし、恩恵としてもらうものでもありません。外国人自らが様々な資料(立証資料)を使って、自分自身をアピールし、ビザを勝ち取るのです。入管は提出された資料でのみ、許可・不許可を決めます。許可か不許可、二つに一つです。裁判の一部勝訴、和解、話し合いでの痛み分けはありません。

複雑な案件や難易度の高い案件を受任したときには、立証方法に苦労します。クライアントも不安でしょうが、私もプレッシャーを感じます。夢に出てくることもあります。

自らの滞在を確保するためには、時に、行政書士へ依頼することも必要と思っています。確かに費用はかかります。しかし、日本に入国ができる、日本に引続き滞在できるならば、価値のある支払いであると私は考えます。

今一度、自らの人生設計と同じようにビザについても真剣に考え、日本で夢を叶えて下さい。チャンスをものにするのは、あなたです。そのために行政書士を上手に使えばいいのです。

皆様のお力になれるよう微力ではありますが、精一杯努力いたします。格別のお引き立ての程、よろしくお願い申し上げます。

2007年春
東京 高円寺の事務所にて
行政書士 佐藤正文

2007年の文章を今読み返しても、外国人が日本で暮らす上で「命・金・ビザ」の三点セットが最も重要である点に変わりはありません。ビザに関しては、在留カードの導入以降、入管による外国人管理が強化されています。2007年当時は点による外国人管理でしたが、今は退学、卒業、転職、離婚など滞在状況に変化があるたびに入管への届出義務を課しています。いわば、面による外国人管理です。

日本国は口では多文化共生という心地よいフレーズを唱えます。しかし、実態は、その時々の日本の社会情勢を反映した外国人政策です。日本にとって都合のよい外国人はウエルカムだけど、それ以外の外国人はNOという姿勢であり、政策に長期的な視点がありません。

もともと入国管理局は、外国人の出入国と滞在の許可不許可の決定、オーバーステイ、資格外活動の取り締まりなどを行う行政機関です。入管は泣く子も黙る外国人の警察なのです。多文化共生と外国人の取り締まりは時に衝突しますが、矛盾する行為を同じ組織が担当することを是とする日本国の姿勢に多文化共生社会実現の本気度は感じられません。

申請書の書式変更の度に申請書に書く情報量が増え、最近は他省庁の担当領域に及ぶ情報まで書く必要があります。申請書に書けば、審査官はその内容を審査しますから、今後は他省庁を巻き込んだ多面的な外国人管理になっていくと思われます。

『佐藤正文の頭の中』では、佐藤正文の仕事への取組み、心構え、感想、日ごろ考えていることなど、つれづれなるままに、ひぐらしパソコンにむかい、心にうつりゆくよしなしごとを そこはかとなく書き綴ります。

第21号
2021年(令和3年)8月3日
執筆者 行政書士 佐藤正文

東京都千代田区に事務所があるエンタメ、芸術ビザを専門にしている行政書士事務所です。日本で興行ビザ申請の件数が一番多い行政書士と自負しています。

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